手芸が好きな、本当の理由。

よく、手芸好きっているじゃないですか。
かくいう私もその一人だったりするのですが。

それってたぶん、”自分を落ち着かせたい”からなんじゃないかな、って思う。
刺繍に縫い物、編み物、ビーズも、どれもこれも、
ヨーロピアンであれアジアンであれ、
”手芸”といわれる大半のものは、
出来上がったそのものは、うっとりするほど甘美で、
目も心も奪われてしまうような美しいものがたくさんあるけれど、
そこにいたる作業はどこまでも単調。

ちくちく、ちくちく、ちくちく。
ちくちく、ちくちく。
ちくちく、ちくちく。
・・・
ちくちく、ちくちく、ちくちく。

果てしなく続くかのような、その時間は
ただひらすら耐える時間だと、傍からみたら思えるのだろうか。

この時間こそが必要で、
この作業をやり続けるのだといったら、
驚かれるのだろうか。

ちくちく、ちくちく、ちくちく。

自分にはどうにもできないこと。ってある。
どうにかしたくて、悲しくて、辛くて、
できることは全部したいのに、全部したのに、
どうにもならないこと。
ただ、時間が過ぎるのだけを、時が解決してくれることだけを
待つしかないとき。

そういうとき、何よりも効くのがこの
ちくちく、ちくちく、ちくちく。

いち、に、さん、し、
数を数えて。
強すぎないよう、弱すぎないよう。
ご、ろく、しち、はち、
同じ力で、
ずっと、ずっと、変わらぬ調子で。

これはきっと、
自分で自分にかけるおまじない。

おばあちゃんからお母さんへ、
お母さんから私へ、
私からいつか、まだ見ぬ小さな女の子へ・・・
女の人から女の人へ、
ひっそりと静かに伝えられる
ナイショの、絶対の、おまじない。

手芸って、そんなものだと思うんだ。