自分のペースを整えてくれる本〜動けなくなったとき、のこの1冊・この1曲

なんだかどうしようもなく忙しかったり、
知らず知らずに無理をしていたり、
気がついたら…パタンと心が折れていた。動けない。。。

…そんな時に、自分のペースを整えるような
音楽や本。ってありますよね。

音楽ならこれ↓
●サニー・サイド・オブ・ナラ・レオン~ミュージック・フォー・サンデイ・ラヴァーズ / ナラ・レオン

サニー・サイド・オブ・ナラ・レオン~ミュージック・フォー・サンデイ・ラヴァーズ

サニー・サイド・オブ・ナラ・レオン~ミュージック・フォー・サンデイ・ラヴァーズ

優しくってけだるい声、まあるく響くその音たちは、そう”包み込んでくれる”
この音たちは「頑張れっ!」なんて一言も言わない、
ただ、「気持ちいいよね」「そう、これぐらいが好き」そんな、そんな
どこまでも耳に優しく”気持ちいい”音たち。
どれぐらい聴き続けたのか…
ふと、現実に戻ったときに、「さ、起きようかな」とか
「あ、動けそうかも」とか
そんな風になれる。

本ならこれ↓
●家守綺譚 作者: 梨木香歩

家守綺譚

家守綺譚

西の魔女が死んだ」であまりにも有名な梨木香歩さんだけれど、
私が、何度も何度も、それこそ、お気に入りのページが擦り切れ、フレーズをまるごと覚えてしまうくらい、折に触れて読んでしまう一冊。
どうも私はすごく古風な日本的な人間のようで、日本の古い風景や記憶をとどめたような作品、ときに少しひんやりするような優しさのあるものが好き。そして田舎育ちの影響なのか、草花がある風景って落ちつくのです。ということで、その両方を兼ね備えたこの作品は―――そう。私のペースメーカー的な一冊。

【あらすじ】
ある古い古い日本家屋の”家守”になった主人公。だが家の中では、ちょっと不思議なことが起こる家だった。庭の百日紅さるすべり)に恋をされたり、掛け軸から遠い昔に亡くなった旧友が船を漕いで会いにきたり…。
【見所】
表紙の和風な縦縞、中央に配された題字。見返し、に神坂雪佳(かみさかせっか)の絵を使った贅沢かつ粋な装丁もステキです。

ちょっとペースダウンして、”本来の自分ってどんなだっけ?”というギモンが心に浮かんだときに、読んでしまう本でした。

【関連図書】
「家守綺譚」の続編とも言うべき、
●村田エフェンディ滞土録 作者: 梨木香歩

村田エフェンディ滞土録

村田エフェンディ滞土録

も、好いです。

現代日本に残る”粋”なるもの

”粋”なもの、ってどんなものでしょう?
と問われるとなかなか即答できないものですよね〜(少なくとも私は苦手・・・^^;)

ただ、「嗚呼、なんて粋な世界が、まだ残っているものなのかしら」と
最近思っているものがあります。
――落語。

実際に見に行くのが一番!と思いますが、活字中毒派の方には
この2冊をおすすめします。

赤めだか

赤めだか

●赤めだか 作者: 立川談春 ●落語家はなぜ噺を忘れないのか (角川SSC新書) 作者: 柳家花緑

「赤めだか」は割りと有名な本ですよね。
立川一門の棟梁様である談志(だんし)と、立川一門にその後続々と入ってくる
若者たちのドタバタはちゃめちゃな日々と、ときどき垣間見る談志の優しさ…
そんなもろもろが相まって、あっという間に読み終えてしまいます。
落語会において立川一派がどんな立ち位置なのか、も明快にわかる。
彼らのやる気、も理解できる。今や「古典」となった落語を、現代において
どういう距離感でつなげていくのか――立川一門は、そういうことを、本気でやってる
流派なんだ、とこの本で理解できた瞬間、私はなぜか涙が出てました(涙腺ゆるいんです・・)

談志さんの”優しさ”って、ジミー大西を馬鹿にしつつ食わせてやりつつ、
そして、絵画の才能見つけてやれる。そういう類の優しさなんだと思う。
あー、あと、ビートたけし、とか。

「落語家はなぜ噺を忘れないのか」は…ご存知の方は少なめでしょうか…?
ただ、良書ですよ。とっても☆
柳家花緑(やなぎやかろく)さんというのは、落語会の人間国宝柳家小さん(やなぎやこさん)」の孫でありお弟子さん、という立場です。落語会のプリンセス、といえばわかりやすいでしょうか。その花緑さんが、自分の小さい頃のことから今にいたるまでぜ〜〜んぶ書いちゃった、というのだから、これはある意味すごい暴露本です(笑
だって「落語の覚え方はね…人に聴きに行って、寝そうになって〜、お礼はね、こうするんだ」とかそんな話から、「実際何本覚えているのかっていうと…即座にできるのは意外と少なくて20〜30、ちょっとおさらいすればできるのが、最近肌に合わない(年齢とか経験とか)が、、、」とか非常に具体的に書かれている。そんな内幕を全部しゃべっちゃっていいの!???みたいな気持ちになりながら読んじゃいました。あ、小さい頃の修行のさせられかたも凄かった。築地の魚河岸やにいきなり丁稚奉公に行かされて、もちろんお坊ちゃん扱いなんてしてもらえない、配達の品を云々〜みたいな面白い修行時代の話も満載。
私がもっとも感動したのは、「小さん」と「立川談志」さんの話でしょうか。この2人、師匠と弟子の関係。小さんが最もかわいがりその才能を認めていた談志、談志も師匠をめちゃめちゃ尊敬してた。だけど談志は、落語会の体制についてもの思い、結局、自分で新しい「立川流」を総説しちゃう訳で、落語会の長たる「小さん」は…ねぇ。その実際のところの、個人と個人の気持ちとそれぞれの立場の狭間での2人の行動や言葉を、当時ちっちゃかった花緑くんの記憶が紐解いていくわけなのですが…これは感動的。この本、落語会の人は全員読むべきだと思う。その部分だけでも。それぐらいの高い志を持って、芸に励んでるから、あの人たちは、ああいう立場に至ったんだな、とすとんと腑に落ちます。
人間、高い志にまでたどり着けるかどうかはわからないけど、
志が高くなければ、そも、高いところまで至れないですよね。
そんなことを自然に思いました。


ということで、私が最近、熱心に機会があれば見ているのは、
柳家花緑(やなぎやかろく)、立川談春(たてかわだんしゅん)
2人とも40代?もっとも脂ののった、いい時期の芸人さんです^^
花緑さんは、おぼっちゃま、いい人、ちょっとお惚け?系の
あたたかい優しい芸風で、いらっしゃるお客様も品がいい感じ。
談春さんは…ぐいぐいひっぱる感じ。”場を持ってく”みたいな、
強さがある。(もちろん、そこは落語世界なので、力づくではなく、笑いで、ですが)

最近はこれに行きました↓
●らくご×情熱大陸
2010/9/4(土)18:00開演 桂米團治立川談春柳家花緑 / 斉藤和義
http://www.mbs.jp/jounetsu/rakugo/
●「花緑ごのみvol.27」
2010/10/20(月・祝) 柳家花緑独演会
http://www.me-her.co.jp/karoku/

落語って、いわゆるその辺で日常的にやってるものだと2〜3千円で見られて
数時間思いっきり笑えて、すっきり楽しい気分で帰れるです。超お得☆
気軽にぜひとも行ってみてほしいだす。

P.S…ブラックというか、強烈に濃ゆいものが見たい、という方には、
立川流の「立川らく朝」のをオススメしておきます。
医者で自身が癌になって闘病生活を越え、それをネタとして落語する方です。
癌になった本人にしかいえないような凄い言葉がガンガン出てきます。
数年前に見たんですが、すごい衝撃的。今も忘れられないインパクトがあります。
癌になるって、こういう壮絶なことなんだなぁ、と当たり前のことを強烈に思い知らされます。

全く関係ありませんが、医者で落語家って、私はすんなり腑に落ちます。
できる芸人って、超頭いい!から、その才能を何に使うかなんだろうな、という。ね。

決意表明、のようなもの?〜星なしで、ラブレターを。

強くて、芯があって、凛々しくて、
過剰でなく、不足がなく、きちんと正しく”100”を伝えられる、
へつらいでなく、高飛車でなく、自分の考えを伝えられる、
そんな言葉が使えるように、いつか、なりたいな、と
電車の乗り換えで階段を降りている時、ふわり、そう思った。

今、私の知る限りだと、「スーザン・ソンタグ」様と「石井ゆかり」様。
この2人の書く文章に対しての私の気持ちはもはや、
崇拝、と言えるほどだと思う。

"言葉”が全てではないのは、もちろん、その通りだけれど、
言葉から入って、いつか、そういう風になれる(少なくとも近づける)
ということも、けっこうあるんじゃないかな。とも思う。

具体的にどうなりたいんだよ!って言われると
言えないんですけど、、、ただ、自分のなかに、ぼわんとした像が、
今日、結べたようが気がしました。
 
という流れなので、
今日読んだ本は、当然(?)ながら…
●星なしで、ラブレターを。 作者: 石井ゆかり

星なしで、ラブレターを。

星なしで、ラブレターを。

【こんな時・人におすすめ】
何か辛いことがあったとき/迷ったとき/救いを求めたいとき/優しい気持ちになれないとき/自分が嫌いになりそうなとき/泣きたいとき/勇気づけられたいとき 等

【名言】※今度、抜きます。ありすぎて選べず・・・

☆今日は、個人的にすごくショックなことがあったので、、、眠れそうにありません。自分がしてしまったこと、を、きちんと、受け止めねばと思います。

鉱石倶楽部 長野まゆみ

きれ〜・・・
ミネラル(鉱石、とも言います)。
最近、「ミネラルショー」なるものに
先達につれていってもらいました。
(無償に石に彫り物がしたくなったので、その材料を買いに)

行ってみたら…そのあまりの美しさに、
一目惚れ、です。
・ヒマラヤ水晶のクラスタ

我が家につれてきてしまいました!!!
淡いピンク色が朝日に透き通ると
本当に綺麗!
最近は、毎朝カーテンをいっとあけて
このコに朝日を当ててきらきらした姿を眺めるのが
朝の日課です。心がすっとします。
手のひらに乗るくらいの大きさで、
なんとも小宇宙のような、不思議な雰囲気があるんです。
(今度写真アップします!まだやり方がいまいちわからず…^^;)

「初めて行って、クラスター(結晶の原型)買うのはどうなのか…?」
非常に悩んだのですが、
すごく、私に、合う気がして。
3回そのコに会いに行って、最後に「決め」
いきなり大物にめぐり合ってしまいました・・・

で、すっかり箍が外れてしまい、
モルダバイト ※彫り物候補。仏陀とか彫りたい
・ストロベリークオーツ ※先達様とお揃い^^
翡翠(ひすい) ※彫り物候補
・砂漠の薔薇
総計5種類をご購入〜・・・
あっというまにはまってしまった私。。。
綺麗に磨かれた”宝石”よりも
私は俄然、原石の方が心の琴線に触れるようです。

※次のミネラルショーも必ず行きます!

その先達様のブログで掲載の本がこれ↓
「鉱石倶楽部」 長野まゆみ

鉱石倶楽部 (文春文庫)

鉱石倶楽部 (文春文庫)

早速買って読んでしまいました☆
それはそれは美しいミネラルの写真が紙面いっぱいに掲載されていて、
視ているだけですっごい楽しい。気分がいいです。
ミネラルの説明もしてあるし、
長野さんのエッセイもついてます。
巻末には、ミネラルが身近で見られる(買える)お店も
掲載されていて、とっても親切。
都内だと、渋谷の東急ハンズがかなり大規模に
ミネラルを扱っているようす。今度行ってみなくちゃ☆

☆  ☆  ☆
さっき、図書館に予約した本を借りてきました。
・「カラマーゾフの兄弟」(中・下巻)ドストエフスキー

読みたい本がたくさんあるのに、
ここ数日ちょっと体調を崩していて、
ぼんやりとずっと眠くて、頭に入ってきません(泣)
そんな訳で、本が読めない分、久々にいろいろ
ブログにアップできたから、よかったかな。
ではでは、おやすみなさい・・・

ドラッカー⇒辿る⇒渋沢栄一⇒辿る⇒「論語」に辿りつくの図。

[渋沢栄一の「論語講義」 著者:渋沢栄一 平凡社新書]

ドラッカーが経営の本質を学んだのは渋沢栄一からだった。
そして、その渋沢が終生手放さなかったのが
―――『論語』だったのである。

そして、その栄一による『論語講義』を現代語訳したのが、これ

渋沢栄一の「論語講義」 (平凡社新書)

渋沢栄一の「論語講義」 (平凡社新書)


2010年9月15日初版、まだ世に出てから1ヶ月、
本当に初々しい本ですね〜^^
こういう新刊本でイイ本にめぐり合えた時は、
図書館ではなく、アマゾンではなく、BOOKOFFではなく、
「本屋さん」じゃなくちゃ、
という気持ちになります。
町の本屋さんも意味があるなぁ、と思う瞬間、
いわゆる「目利き」的なお仕事ですね、現代で本屋さんが生き抜くためには。
がんばってください〜〜〜☆

ドラッカー、言わずもしれた経営の神様、
私も、かれこれ10年前くらいから、彼がなくなるまでは
そりゃあもう、随分読みました。
女性が読むには、はじめはちと重いかも(ってかかなり重い)
難解読書、の部類に入るかもしれません。
だけど面白い。非常にシンプルで強い重大なる法則がいかに意味あるものなのか、
が、緻密に書かれてます。
そういえば、最近はドラッカー超訳本ともいえる本が売れてますね〜
もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」

まー、とりあえずこの本一冊読んでおくのはテでしょうね。
そして、面白かったらドラッカーを読む、と。

でねでね、ドラッカーがいかに凄い人だったのかは、
現代日本のある程度以上のポストについておられる
ステキなおじさま方はよ〜くご存知かと思うのですが、
そのドラッカーが崇拝していたのが、

日本の貨幣経済の礎「渋沢栄一」であったと。
栄一は、敗戦のどん底日本を奇跡的な経済復興へと導いた、
まさに立役者だと、私は思います。
最も金にまみれる立場において、最も金にまみれることのなかった人。
「お金」との付き合い方の本質について、深い洞察力があったのだと
私は思います。

これは、ドラッカー読んでるおじさまなら、
・知ってた派
・知らなかったけど、超嬉しい派
このどちらかしかないのではないでしょうか?
世界のドラッカーが好きなのは、日本人である栄一だというのなら!ねぇ!!

でねでね、そのドラッカーが敬愛する「栄一」が
終生手放すことがなかった、MY教科書が『論語』だったと。

…これは、読むしかないんじゃないでしょうか?
世のおじさま方!ぜひ、私と一緒に読みましょう☆

【本書の名言】
《栄一の講義部分を一部抜粋》
そもそも人間を観察するには、まず第一に、その人の外面にあらわれた行動の善悪や正邪を見る。第二に、その人がいましている行為は、何を動機にしているかをとくと見極める。第三に、さらに一歩進めて、その人の安心はどこにあるのか、どの辺りに満足して暮らしているのかを察知すれば、必ずその人の嘘偽りのない性質が明らかになる。いかにその人が隠しても、隠せるものではない。
〜略〜
この三段階の観察法を使っていけば、人がいかに外見をごまかいsても、どうしてその是なくの性質まで隠せるだろう。善人は善人、悪人は悪人だとはっきりわかり、あたかも地獄の閻魔様が整然のその人の善悪を映し出すために使う「浄玻璃の鏡:にかけたようになるだろう。本章の最後の言葉を二度繰り返しているのは、決してその識別に誤りがないことをはっきり断言しているのだ。
(為政第二の10より)

【本書の構成】
学而第一/為政第二/八佾/里仁第四/公治長第五/雍也第六/述而第七/子罕第九/郷党第十/先進第十一/顔淵第十二/子路第十三/憲問第十四/衛霊第十五/季氏第十六/陽幣第十七/微子第十八/子張第十九/尭日第二十/論語総説/「論語講義」を中心として渋沢栄一年譜

上記の項目を、
1:論語からの抜粋(現代語訳・漢文、両方掲載)
2:それを受けての栄一の解釈(講義)
3:ときどき最後に(解説)※知っていたほうがわかりやすい内容に訳者がコメント
という順にそれぞれブレイクダウンしていきます。
論語自体に完全現代語訳がついているうえ、渋沢栄一がそれをもとに「講義」していてそれが全掲載されている訳ですから、非常に読みやすいです。
そして、はっとするような、思わず片手に鉛筆もって線引きたくなるような、
すばらしい言葉の宝庫です。座右の書、として持つ価値ある一冊です。
いわゆる上流にいる方は読んでしかるべき一冊ではないでしょうか。

【こんな方におすすめ】
日本経済不況を嘆き、自分の会社の景気低迷を嘆き、なんとかしようとお思いの経営陣の方、渋沢栄一好きの方、ドラッカー好きの方、禅語・論語・中国思想に興味のある方、西郷・大隈・山県など維新の立役者に興味をお持ちの方(実エピソード満載です)、維新の歴史が好きなかた

はぁ〜〜〜〜、イイ本って、ぱりぱりしてる感じがする。
そして読み終えた後、すっきりした気分になるんですよね。
にしても今回は、
ドラッカー渋沢栄一/禅語とか中国哲学思想
と全てに萌え萌えな私にとってはこれ以上ない垂涎の本でした

新書ブームも、だいぶ盛りを過ぎて、
少し辟易気味だなぁ、という位までくると、
こういう、おっ。といういい本でマニアな感じの本が、
出たりします。これぞ掘り出し物。
大ブームがあったからこそ、「ま、いいんじゃない?」的に
OKもらえた本だろうなぁ。いや、いい本にめぐりあえました。

【関連のご案内】
☆王子に渋沢栄一資料館があります。いいとこです。
http://www.shibusawa.or.jp/museum/index.html
ちなみに、栄一様はめちゃめちゃ多産です。(もちろん栄一が生んだ訳ではないよ(笑)

ある出会いによって本を思い出すということ〜数学者列伝

すごく感動しやすい。という性質を
私は多分に持っているように思います。

何かを見たり、聴いたり、触れたり、
誰かに出会ったとき、その瞬間の声や、笑顔や、ふと発した言葉、
音楽、映画、本、マンガ、言葉、、、
あらゆる”感動的”なものに出会った瞬間、
その”感動”に関連する、過去の蓄積のあらゆるものが
イメージとしてばんばん!と沸いてくるのです。


今年出会ったある人に際して、久々に思い出したのがこの本。

天才の栄光と挫折―数学者列伝 (新潮選書)

天才の栄光と挫折―数学者列伝 (新潮選書)

天才の栄光と挫折―数学者列伝 (新潮選書)

藤原正彦の「国家の品格」は正直、私にとっては、
「ま、ふつー」だったけれど、この本はよかった!

だいぶ前に読んだ本なので、イメージでしか覚えてないけれど、
超有名な数人の数学者の人生について
丁寧に、愛をもって描かれている。

数学者って、哲学者に似てるんだなぁ。と思う。
もちろん、学問の派生の歴史を考えれば、そのままずばりなんだよね。
古代ギリシャにさかのぼれば、
全ての学問の祖こそが、「哲学」であり、
そこから「数学」や「音楽」が神へ捧げる学問として分離、
「芸術」「美術」…どんどんと哲学からいろんな分野が分離し、
最も近年分離したのが「科学」だろうか。
今や、哲学の最後の砦と思われていた”心の問題”すらも
脳科学」として切り離されつつある昨今、
「哲学」に残されるのは、いったい・・・
その狭き道を突き詰めることこそ、哲学の宿命であり命題であるのか。

…と、「数学」に話を戻します。

数学、って私好きです。美しいから。
特に、統計学が好き。統計心理学が最高に大好き。
ある一定量にまとまると、驚くほど美しく、
ある一定の法則を示す。その美しさは、どれほどたくさんの数字を
どれだけ眺めていても飽きない。美しい。

この「数学者列伝」の中では、
関孝和(日本人です)
・『フェルマーの最終定理』を証明したワイルズ
の2人のところが最高に好きだった記憶がある。
数学という美しさに魅了されてる感じ、
そして、数学者の”数学”の高みに、極みに
どこまでもどこまでも到達しようとするその志の高さ、が
ものすごく好き。すごくすごく共感できたのだと思う。

人間にとって、真に楽しいものとは、
気軽だったりラクチンだったりするものとはむしろ真逆、
大変だったり辛かったりするけれど、それでもやめられない、その先にこそ
あるんだと思う。

この本に紹介されている数学者は、まさにそんな「真の楽しさ」を知る人たち。
そして、数学とは、
「真の楽しさ」を知るに足る、素晴らしくも魅力的な分野なのであると、
心底思っている著者・藤原正彦氏の
数学への崇高な愛を感じる名著でした。
久々にまた読み返してみようかな〜

【こんな人におすすめ】
数学好きな人/哲学好きな人/歴史上の有名人好きな人/論理的に考えることが好きな人 などなど

同じ時のなかで スーザン・ソンタグ

「私、この人が好きだと思う」
これが第一印象。

――表紙の写真(著者:すーざん・そんたぐ様の横顔)に
一目ぼれしてしまった、のです。

同じ時のなかで

同じ時のなかで

読書量にかけては今や会う人会う人に「変態・変人」としか
言われないぐらいの量は読んでいる私ですが、
こういうインパクトある出会いって、、、
めったにない。久々に来たーーーーっ!って感じです。


この本の編集者様、ブラボー!!!
よくぞこの写真、この大胆なレイアウトデザイン、
勇気を持って選び決められたと思います。

…って、凄いのはもちろん、
外側(装丁)だけじゃないのです。


「凛とした」
この本を一言で言い表すのならば、これ。
ユダヤアメリカ人である彼女の著作に対して、
この”THE日本”的な形容が、最も合うのは不思議かもしれない。)

その文体・内容から来る印象は、
美しく、かつ、強さがある。
そう、絵画にたとえるのなら…
上村松園「序の舞」の、
揺るぎない意思の力と、
見事に鍛錬されたその手によって美しく差し出された扇、
稽古事に打ち込む古来日本女性の、一瞬に凝縮された”美”。

”美”とは言っても甘いとか、優しいとか、そういったものではない、
もちろん媚びるわけでもなく、
かといって女性であることをあえて隠すわけでもない、
女性としての感性はきちんと、その人間性の中に、
紡ぐ言葉のなかに感じられる。

この絶妙なバランス感、ニュートラルさ。
ソンタグの「書くこと」に対する真摯な姿勢、
どこまでも突き詰めていくことは、そぎ落としていくこと、シンプルであること
それをし続けることで生まれる揺らぎのない強さ。

求める情報が凝縮され、凝縮され尽くすのは、、、
それはまるで、
地底の奥深くで泥が圧力によって結晶化しきらめくミネラル(鉱石)となるよう。

泥が凝縮されて無色透明に輝くダイヤとなる――
読み終わったあとに、そんなことをぼんやり思いました。
…私の印象はさておき。

・「ドストエフスキーの愛し方」(1)
・「同じ時のなかで」(2)
私は、この本の中でも、突出してこの2つが好き☆
もちろん、ドスちゃんが大好きだから!っていうのもあるけど、
この(1)に出てくる本「バーデンバーデンの夏」というのが
めちゃめちゃ読みたくなります。そんたぐの手放しの絶賛がまた、
すばらしくて!!!萌え心もそんたぐにかかると、こんなにかっこいいのか!
と、また衝撃を受けたりします。
「バーデン〜」は私も未読ですが、著者の旅とドスちゃん(奥様と旅行中)が
一冊の本のなかで不思議に交錯していく話だそうです。
今度読むぞ〜〜〜☆

(2)は、これはもう、すばらしい!!!としかいいようがないです。
作家がすべきこと/作家の美質/書くこととは何か/
何かの形で「言葉をつくる」ことに職業として携わっている人は
一度は読むべきだと思う。
読んで衝撃を感銘を受けることはあっても、
「損をした」と思うことは絶対ない。

私が好きな作家として、本日、新たに一人「ソンタグ」が加わりました。
「同じ時のなかで」スーザン・ソンタグ
これは名著です。




>>
【名言】
・言葉は対象に対して変化を起こし、何かを加え、何かを差し引く。

・「芸術における真実は、これまた真実である矛盾を抱え込んだ真実である」。

・作家の第一義務は、意見を持つことではなく、真実を語ること……〜略〜
多くの異なる主張、地域、経験が詰め込まれた世界を、
ありのままに見る眼を育てることだ。

・最も大切にしているもろもろの価値のなかには、
矛盾も、ときには緩和しえない対立もありうる、
ということを想起させること(「悲劇」とはまさにこのことを指す)

・作家がすべきことは、人を自由に放つこと、揺さぶることだ。
共感と新しい関心事へと向かって道を開くことだ。
もしかしたら、そう、もしかしたらでかまわない、
今とは違うもの、よりよいものになれるかもしれないと、希望をもたせること。
人は変われる、と気づかせることだ。

・「この下界では、生きることは変化することであり、
完全な生とは変わり続けてきた生のことである。」

・文学は対話であり、反応の行き交いです。
複数の文化が進化し相互理解するのにともなって、
活気をえていくもの、また、消滅していくもの。
それらに対する人間の反応の歴史が文学です。

・文学は、世界とはどのようなものかを私たちに教えてくれます。
文学は、基準を与え、言語によって、また物語によって
具体化された深い知識を伝えてくれます。
文学は、自分でもなく自分たちのものでもない存在のために
涙を流す能力を醸成し、鍛錬してくれます。
自分でもなく自分たちのものでもない存在に共感できないとしたら、
私たちはどんな存在になっていたことでしょうか。
少なくとも何度か、我を忘れることがなかったとしたら、
私たちはどんな存在になっていたことでしょうか。
もし学ぶことが、許すことができず、
自分たち以外の存在になることができなかったとしたら、
私たちはどんな存在にあっていたことでしょうか。

・私は物語をする人(ストーリーテラー)なのですから。

・(作家がすべきことは…)
「いくつかあります。
言葉を愛すること、文章について苦闘すること。
そして、世界に注目すること」。

・真摯であること。けっして冷笑的(シニカル)にならないこと。

・したたかにたくらみを凝らして、ドストエフスキートルストイ、ツルネーゲフ、
それにチェーホフに確実に触発され、影響をうけることがかないそうな時代にうまれること  (―作家の美質、について)

・書くことは何かを知ることだ。
多くのことを知っている書き手の作品を読むのは、
なんという歓びか。
あえて換言する。文学は知識である―だが、その種のもっとも偉大な例でも、
不完全な知識であることは変わりない。
あらゆる知識が不完全であるように。

・(ナディン・ゴーディマーについて)
文学に生き、歴史に生きるかぎり避けられない矛盾と人の心について、
彼女は賞賛に値するほど複雑な見方を紡ぎ出してきた。

・小説家は読者を旅に連れ出す人だ。空間をたどり、時間をたどって。
小説家は読者を先導して深遠を飛び越え、ものごとをそれまで
存在していなかった別の場所へと運んでいく<<

【構成】
スーザン・ソンタグ最後のエッセイ集」と帯にもあるとおり、
そんたぐ様の、主要テーマ(文学、写真、美についてetc…)が
講演録やエッセイという、非常にわかりやすく簡潔な形で読める。

【こんな人におすすめ】
文学&言葉を愛する人、職業にしている人/そんたぐ好き(コアなファンにとっては、最後の遺稿集は必読ですよね)/初ソンタグの方(主要テーマをそれぞれ簡潔な分量で読むことができる、講演録も多いので読みやすい)/政治・思想に興味をお持ちの方/最近「白熱教室〜マイケル・サンデル教授」「超訳 ニーチェの言葉」など哲学ブームで思想・哲学が気になっている方/自分の考えを自分の言葉にしたい人/自分の核みたいなものを持ちたい人/レベルアップした知的な会話ができるようになりたい女性 などなど